日本高齢者虐待防止センター電話相談

2008年12月28日日曜日

日本高齢者虐待防止センター ニューズレターNo.3

☆  暮れも押し詰まってきましたが、みなさん、お元気ですか?

予告どおり、12月末にニューズレターNo3をお送りします。


☆  No3のコンテンツは以下のとおりです。

△1 虐待対応チームに関する福祉新聞情報

12/14、このMLに愛媛県の前神さんがUPしてくださった対応チームに関するものです。 

△2「支援されるみなさまへ」(埼玉県立大学 梅崎薫)

ものわすれクリニックのドクター松本一生先生の素敵なことばのご紹介です。

△3 介護殺人に関するニュース(3件)

△4 シェルターに関する情報

△5 身体拘束(新聞情報)

△6 ネグレクト?(新聞情報)

    △7 訪問介護の生活援助

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△2 「支援されるみなさまへ」              埼玉県立大学 梅崎薫


平成20年が終わろうとしています。今年は26日が金曜で、いつもよりやや長い年末休暇の方もあることでしょう。しかし高齢者虐待に対応されている方々には、「そんなこと言っていられない!」状況もあるのではないでしょうか。生活には「休み」がないので、介護家族や保健医療福祉の支援職には24時間、365日の対応が求められます。そんななか、高齢者やそのご家族たちに、たいへん頼りにされている支援職の方々が、体調を崩して休職されていると伺うことが多くなっています。やっと社会保障費見直しの気配はありますが、まだまだ現場に反映されるのは先のことでしょう。

そこで高齢者とそのご家族の力強い見方である支援職の方々や介護されているご家族の方々のセルフケアに、松本一生先生の言葉を紹介したいと思います。松本一生先生は大阪でものわすれクリニックを開業されているお医者様で、認知症高齢者を介護する家族へのケア、認知症本人支援、支援職へのケアなどを精力的にされている先生です。著書に「認知症を生きる」などがあります。以下にご紹介する言葉は、支援職へ向けられた言葉ですが、「支援職」のところを「介護家族」と置き換えて読んでいただきますと、介護家族の方々にも、こころの支えになる言葉ではないかと思いました。


松本一生先生の言葉より

自分が支援職であることが罪であるといった感情に襲われた人は少なくないと思います。善意があるほど、熱意にあふれているほど、その結果が良い方向に向かなければ、そのことを自分のせいにしてしまうからです。

今、まさに、そのような気持にとらわれている支援職の人に、ぜひ伝えたいと思います。

あなたの善意がたとえ良い結果につながらなくても、あなたの行為は赦されるのです。考えてみてください。もし、あなたがここで燃え尽きて引き下がってしまったら、世界は「あなた」という善意の資源、大いなる社会資源を失います。その損失はあなた自身が考えているよりも、もっともっと大きいものです。

あなたが引き下がらずに、この先の10年、20年を支援職であり続けたと考えてください。これまでのように、全力疾走しないあなたが、じっくりゆっくりと高齢者や家族の支援を続けるなら、高齢者や家族は、どれほどあなたの存在によって支えられるでしょうか。

大きな光を出している人は、自分では「光ってなどいないし、自分は弱い状況にある」と思っています。自らがボロボロになりながら、それでも光を出しながら、周囲を助け力づける人々によってこそ、人の生活は支えられます。

あなたが、ゆっくりと燃えることによって、長くこの世界が明るさを保てますように。

 良いお年をお迎えください。          

梅崎 薫

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△7 訪問介護の生活援助

編集者から;

みなさんは、虐待事例対応や虐待予防のために、生活援助中心のヘルパーさんを導入したいのに同居家族がいるということで使えない!!という体験をなさったことはありませんか?

介護給付適正化推進事業の一環で、「ケアプラン点検支援マニュアル」が作成され、点検作業が実施されるようになったためか、ケアマネジャーさんのほうで、同居家族がいる場合は、このヘルプサービスを使わないよう自主規制したり、保険者がきびしく制限したりしているといううわさを聞きます。

国は一律に介護給付の支給の可否を判断しないように、と通知をだしていますが、みなさんの市町村ではいかがでしょうか?

○○県では、できるだけ早く別の対応を考えることを前提に、虐待事例に同居家族がいても生活援助のためのヘルパー派遣を認める、という話が介護支援専門員協議会に対して行われたようです。

川崎市や千代田区などでは、同居家族がいる場合の生活援助について、判断のためのガイドラインやツールをだしているようです。世田谷区では、以下のような事例集を出したとのことです。関心のある方は、ごらんになってください。

世田谷についての情報は、ケアプランの自己作成を行っているマイケアプランのML情報から教えていただいたものです。

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東京都世田谷区が、居宅介護支援事業所、介護予防支援事業所のために、「同居家族のいる利用者の生活援助事例集」を出したそうです。

世田谷区のホームページでダウンロードすることができます。

http://www.city.setagaya.tokyo.jp/index.shtml

ここから、

「福祉・健康」→「介護保険」→「事業者の方向け情報」→「同居家族のいる利用者の生活援助事例集」

でダウンロードできます。

***

なお、鉄道弘済会が出している雑誌「社会福祉研究」103号では、藤崎宏子さん(お茶の水大学教授)がこの問題を取り上げ、「訪問介護の利用抑制にみる『介護の再家族化』――9年目の介護保険制度――」という論文を書いています。

もうひとつ、HHについての情報提供。

○参議院

第170回国会・質問主意書

http://www.sangiin.go.jp/japanese/frameset/fset_c03_01.htm

「介護保険制度に関する質問主意書」

質問第91号

(2008年11月18日提出 大河原雅子・参議院議員)

答弁書第91号

(2008年12月2日答弁 内閣総理大臣・麻生太郎)

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リーマンブラザーズの破綻以後、日本も大変な経済社会情勢になってきました。派遣切りなどを理由に、自殺者や犯罪者等が出ないよう祈って筆を置きます。

みなさま、よいお年をお迎えください。

2008年10月27日月曜日

日本高齢者虐待防止センター ニューズレターNo.2

●みなさま、お元気ですか?!

ニューズレターNo1を発行してから2か月と10日間が過ぎました。No1への反響は特にありませんでしたが、めげずにNo2をお送りします!

No3は12月末にお送りする予定です(副田)。


☆原稿を募集中です!!なんでもOKです。

みなさまからの一言二言をお待ちしています。このMLに直接出していただいてもけっこうですし、今年度編集担当の副田のアドレスまでお送りいただいてもかまいません(asoeda@jcom.home.ne.jp)お待ちしています。


●No2のコンテンツは以下のとおりです(ネット情報はちょっと長いです)。

○1「高齢者虐待事例検討会を通じて思うこと」(サンメール尚和 山極愛郎)

●2 <「社会的退院」の高齢低所得者にどう向き合う>(ネット情報)

○●○3 「電話相談の現場から」(防止センター電話相談員 山浦成子)

○●○●4 「高齢者福祉の制度・政策は誰のため?何のため?」(関東学院 萩原清子)

○●○●○ 5<H19年度 法にもとづく虐待調査関連情報>(ネット情報)

○●○●○●6<高齢者虐待関連厚生労働省情報>(ネット情報)

○編集担当から一言

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○1 「高齢者虐待事例検討会を通じて思うこと」


サンメール尚和 在宅サービス室

担当室長 山極 愛郎


老人福祉分野の現場に勤務して早20年が過ぎようとしている。この間、私たちを取り巻く環境は大きく変化した。措置時代を知る者には隔世の感があると言えよう。

とはいえ、私たちの支援する対象は昔も今も変わらず高齢者そのものである。介護保険制度が創設されるにいたりケアマネジメントなるソーシャルワークの援助技法が世の中に紹介され、法制度の狭間に生ずる矛盾や諸問題への万能薬かのように喧伝されてきたが、問題の解決はそう容易ではない。

このことは、虐待に限らず、およそ困難事例と言われる多くの事例に遭遇する際に必ずといってよいほど痛感させられることである。それは、高齢者の事例が人の来し方行く末に係る問題を孕んでいるからである。つまり、高齢者が歴史ある存在である以上、虐待の問題にせよ生活困窮の問題にせよ問題となる状況は横断的に把握されつつも、問題の所在は人生史に遡るところにこそあり、近視眼的には捉えられない特質を有しているからであろう。

既述のとおりケアマネジメントが介護保険制度の中核を担う援助技法として政策的に位置づけられるにいたり、ケアマネジャーはサービスや制度に精通し、小気味よくこれを使いこなしてこそなんぼといった世界で日々仕事をこなしている。が、果たしてこれで良いものだろうか。

私が知る限り、高齢者虐待事例の行く末は、多く家族の分断や分離といった道を辿ることが少なくない。そして多くの事例は、虐待に至った経緯がモザイク様にしか把握できておらず、実体としてはよく分からない状況にあり、検討も志半ばで潰えるかのような様相を呈している。

そのようなわけで、近頃私は亡き恩師の先生が常日頃仰られていた「人間支援者として」という言葉を今一度かみしめている。


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○●○3 「電話相談の現場から」


電話相談員 山浦成子

私が高齢者虐待の電話相談の窓口に座ったのは,平成8年のことでした。

それから12年。その間介護保険が始まり,高齢者虐待防止法も施行されましたが,高齢者の状況は変わったのでしょうか。

福祉サービスも増え,高齢者虐待が世の中に認知されるようになっても受話器の向こうから聞こえてくるのは,肉親の愛憎とどうにもならない心の辛さです。

虐待に至るにはそれぞれの家庭にそれぞれの歴史があってのこと。電話一本で解決できるわけはありません。私たちは直接関係機関に出向いて行って,調整したり,説明したりできるわけではありません。電話相談では相談者の心の内を聞き,辛さを受け止め,今何が出来るかを共に考えることしか出来ません。相談者自身が悩みを言語化することで,こころの整理をつけ,解決の道を探るためのヒントを見つけてもらうことができるなら,それが電話相談の役割と言えるでしょう。

虐待のこんがらがった糸をほぐすためには,一歩踏み込む「力」が必要なのです。高齢者福祉課や地域包括支援センターへの相談,家庭裁判所への訴え,弁護士への依頼など自分ひとりや家族内での解決はあきらめ,人の力を借りることが大切です。家を開き風を入れる勇気がいるのです。

電話の前では,心を開き,素直になって考えることが出来ように,私たちもしっかりと話を聞き,一緒に考えていけたら良いなと思います。

今日も,電話が鳴ります。「虐待してしまいそう」そんな叫びが聞こえてきて,「良く電話してきてくれましたね。」と言いたくなりました。


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○●○●4 「高齢者福祉の制度・政策は誰のため?何のため?」


萩原清子(関東学院 防止センター)


現在、後期高齢者医療制度をめぐって混乱が起きている。また、2006年4月の老人福祉法改正により、有料老人ホームの定義が拡大され、一般の人には分かりにくくなった。このような法改正により、制度の中身は複雑・多様化し、利用者の混乱・不利益を招いている現状に対して、厚生労働省の担当者は「これから入居を検討している高齢者には『様々な有料老人ホームがあることを認識して、納得いくまで検討を重ねてほしい』と訴える」(2008.10.5 日本経済新聞)。この認識は高齢者に対する「自己責任」の押し付けである。こんな複雑で多様化した有料老人ホームの「改正」を誰が望んだのだろうか。

そもそも、制度・政策は、対象となる人たちが使った場合、「どういう思いをするか」を具体的にイメージしてつくっていくことが重要である。本来、悲しい思いをしている高齢者をなくすための「老人福祉法」ではなかったのか?現在、情報弱者といわれている高齢者のひとり暮らし・夫婦世帯は高齢者の半数を上回っている。福祉を高めるための制度・政策が使う人にとって不利益となるような「改正」に対して「自己責任」を押し付けることは筋違いではないか。かつて、消費者の立場に立った商品テストの方向性を示したと言われる『暮らしの手帳』編集長・花森安治氏は「商品テストは、消費者のためにあるのではい」「なにもかしこい消費者でなくても、店にならんでいるものが、ちゃんとした品質と性能をもっているものばかりなら、あとは、じぶんのふところや趣味と相談して、どれを買うかを決めればよいのである。そんなふうに考え、努力してくれるようになるために、そのために〈商品テスト〉はあるのである」(酒井寛『花森安治の仕事』朝日新聞社)と。

まさに、制度・政策は「かしこい利用者」でなくても不利益を蒙らないものでなければならない。しかし今日では、いかに公的福祉費用のカットができるかという方向に進んでいる。流行の「自己責任」論を容認することは、高齢者の虐待防止を研究・実践するわれわれ自らが「社会的虐待」の「加害者」となっていることを自覚しなければならい。


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○編集担当から

★先日、あるところでケアマネジャーさんが高齢者虐待についてこう話されていました。「虐待事例だと思っても、うんと重いのでなければ、地域包括や行政に連絡しない。地域包括が調査に来たりすると自分が言ったのがわかるし、なによりも、家族は自分を信頼してくれて、なんでも話してくれているのに、言えば裏切ってしまうことになる。」

だから、もうちょっと自分たち(の事業所)でなんとかみていこうと思う、ということでした。

みなさんは、これについてどういうご感想、ご意見をお持ちになりますか?

2008年10月13日月曜日

2008年度目黒区委託事業

目黒区からの委託を受け2008年度職員研修・事例検討・啓発講演会を実施しています。

以下、プログラムです。


職員研修1 「高齢者虐待と法的対応」

    対象 区職員・包括支援センター職員

    5月14日 9時30分〜12時 目黒区総合庁舎

    講師 弁護士 橋場隆志


職員研修2 4回連続演習講座

第1回 高齢者虐待の防止と家族支援

第2回 高齢者虐待の新しい検討方法

第3回 家族への心理的援助

第4回 対人援助の基礎知識

対象 区職員・包括支援センター職員

目黒区総合庁舎

6月9日 6月23日 7月9日 7月23日  1時30分〜4時30分

講師 梶川義人 (6月)

佐藤美和子(7月)


事例検討会  全4回 

8月29日 10月29日 12月24日 

平成21年2月25日

    目黒区総合庁舎 1時30分〜4時30分 

    講師 梶川義人 佐藤美和子(平成21年2月25日)



その他、単独事業として以下の研修・講演会を計画しています。



関係者研修1

    対象 ヘルパー

    目黒区総合庁舎 12月4日(木) 午後7時から9時

    講師 浅井正行


関係者研修2 

「高齢者虐待の気付きと家族支援」

ー民生委員にできること-


    対象 民生・児童委員

    目黒区総合庁舎 

    9月26日 1時〜 80分

    講師 松丸真知子


関係者研修3

    対象 要介護施設従事者

    目黒区総合庁舎

    2月日程未定  

    講師 梶川義人


区民向啓発講演会 

「たった一人の介護とならないために」

    対象 一般区民

    目黒区総合庁舎

    11月17日 午前10時~12時 

    講師 山浦成子

2008年10月3日金曜日

2008年度杉並区委託事業

従事者向け基本研修

    7月4日(金) 10時~11時45分 

    「高齢者虐待と法的対応」

    講師 橋場隆志

    場所 産業商工会館 講堂 


    7月14日(月) 13時30分〜15時45分

    「高齢者虐待」

    講師 金子善彦

    場所 杉並区役所 第4会議室


ケアマネ研修 全3回

    9月12日 高齢者虐待の防止と支援

    ~気付きと記録のポイント~

    講師 梶川義人


    9月29日 援助技術

    ~情報収集から計画立案まで~

    講師 浅井正行


    10月27日 家族への心理的援助

    講師 佐藤美和子 



ケア24対象研修 全4回

    10月6日 発見から予防までにおけるスーパービジョンとコンサルテーション

    講師 梶川義人


    10月14日 事前評価から支援計画立案までにおけるスーパービジョンとコンサルテーション

    講師 梶川義人


    10月29日 支援計画におけるスーパービジョンとコンサルテーション

    講師 佐藤美和子 


    11月14日 支援計画実施と事後評価・予防におけるスーパービジョンとコンサルテーション

    講師 梶川義人



区民向け講演会

    9月24日 「高齢者虐待防止のために」

    ー介護するとき・されるときー

    講師 山浦成子



高齢者虐待防止普及啓発講演会

    「虐待を防止するまちづくりのために」

    日時 平成21年1月26日 午前9時30分~11時45分

    場所 あんさんぶる荻窪第1・2・3教室

    講師 佐藤美和子



介護ストレス・マネジメント

    「頑張りすぎない介護のすすめ」

    日時 2月5日 午前10時~12時

    場所 あんさんぶる荻窪1・2・3教室」

    講師 佐藤美和子

2008年8月18日月曜日

日本高齢者虐待防止センター ニューズレターNo.1

☆担当者からのごあいさつ

みなさん、こんにちは。残暑お見舞い申し上げます。

この暑さと湿気に負けずに、防止センターではニューズレターを発行することにいたしました。会員とこのメーリングリストにご参加のみなさまにメールでお届けいたします。


とりあえず、今年度は、3~4回発行する予定です。

いろいろな方との情報交換、意見交換ができればよいと考えています。ぜひ、感想やコメントをこのメーリングリストにお送りください。

今年度は、防止センターの副田あけみが編集を担当します。よろしくお願いします。


No1のコンテンツは以下のとおりです

★「ヘルプラインだより」(浅井正行)

★☆<施設虐待ニュース>

★☆★「高齢者虐待と法律専門職」(弁護士 橋場隆志)

★☆★☆<介護殺人ニュース>

★☆★☆★「日本高齢者虐待防止学会千葉大会報告」(小川孔美)



★「ヘルプラインだより」  浅井正行

みなさん、こんにちは。専門電話相談員の浅井正行です。当センターのニュースレター創刊にあたりまして、高齢者虐待ヘルプラインの現状をお話したいと思います。

7月5日に行われました日本高齢者虐待防止学会において、過去1年間の相談件数と内容について発表させていただきましたが、2007年度は総合件数214件のうち、虐待相談が163件でした。特徴としましては、相談者の74%が女性、被虐待者の64.15%が女性、そして虐待者の55.56%が男性(女性は28.57%;男女共が15.87%)となっております。

ここから見えてくる特徴の一つは、母親を同居の息子(40~50代、無職もしくはパートタイム、独身もしくは離婚、精神的な疾患あり)が虐待し、別居の娘が相談電話をかけてくるといったパターンです。母親(被虐待者)と息子(虐待者)と娘(相談者)の三角構造という興味深い分析結果が得られました。

また、具体的な事例としましては、虐待者本人からの電話相談が増えてきています。現在進行中のケースでは、いつの間にか母親が役所に一時保護され、突然役所に呼び出された娘(相談者)が対応に出てきた複数の職員から犯人扱いされ、全く話を聞いてもらえなかったというものがあります。相談者本人は、介護疲れから母親をどなったりしたことを認め、反省し、一からやり直したいという気持ちでしたが、役所の職員には通じませんでした。

この相談者からは何度も電話をもらっているのですが、その都度、われわれ電話相談員は、相談者の話にしっかりと耳を傾けて(傾聴)、役所からの連絡を辛抱強く待つ本人の姿勢等に賛辞とねぎらいの言葉をかけ続けました。その結果、相談者本人は現状を着実に受け入れて、本人自身が意識を変えようと努力し始めてきました。ここに、当センターのカウンセリング的役割の重要性を認識した次第です。

防止法には、養護者支援も謳われています。今後、自治体や地域包括支援センターに求められてくるものは、虐待を行ってしまった(または、行ってしまいそうな)養護者への支援ではないかと思います。介護ストレスでバーンアウト寸前の家族介護者がたくさんいます。24時間介護の中で、暴言の1つや、ちょっと手をたたくといったことが、不本意ながら出てしまうこともあるかも知れません。もしもそれを、虐待だと声高に言われてしまったら、なんともやりきれないといったことが多々あるかと思います。実際にそうした相談もあります。

介護者の話をじっくりと聴いてあげることによってストレスを少しでも緩和してもらえるようなカウンセラーの役割を担うことや、虐待者のサポートグループを作って対応するなど、養護者に目を向けて、根本から虐待を防止していくといった方針が今後自治体に求められてくるのではないでしょうか。



★☆ 傷害:入所女性を暴行 容疑で介護士の男逮捕--仙台南署 /宮城
毎日新聞 2008年8月9日 地方版



★☆★「高齢者虐待と法律専門職」2008.08.15    弁護士 橋場隆志

「平成18年度 高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果(暫定版)」によれば、高齢者虐待に関する相談・通報総数18,393件のうち、立入調査による事実確認を行なった事例257件(1.4%)、やむをえない事由等による措置により分離を行なった事例490件(分離事例のうちのうち13.7%)、成年後見制度利用の事例217件が報告されている。

「立入調査」「措置」「成年後見」は、高齢者虐待において最も端的に法律の解釈や適用が問題となる事項である。報告された事例の数倍の事例が検討の対象になったものと推察されるが、ここでは法律(高齢者虐待防止法、老人福祉法、民法等)の解釈や適用が適切迅速に行なわれなければならず、そのためには法律専門職(弁護士、司法書士等)の関与が不可欠である。

高齢者虐待防止法の運用面では、各市町村が「関係専門機関介入ネットワーク」を構築し、このネットワークの中に法律専門職を取り込み、綿密な連携を図ることが期待されている。

とはいえ、同じ法律専門職であっても高齢者虐待に対応できる者の数は極めて限られているばかりでなく、高齢者虐待案件の担当希望者は多いとは言えない。仮に各市町村がいっせいに高齢者虐待の専門弁護士等を求めても実は充分に需要に応えられない。他方、各市町村としては、まず「早期発見見守りネットワーク」や「保健医療福祉介入支援サービスネットワーク」を構築することが優先課題であり、財政的裏づけや経験の有無の問題もあって、市町村によっては「関係専門機関介入ネットワーク」にまで手が回らないという実情がある。その結果今のところ高齢者虐待に関する法律専門職は消極的な形で需給関係のバランスが保たれている。

介護保険財政そのものが逼迫している現状では、各市町村における高齢者虐待に対する今後の対応が気になるところである。


★☆★☆★第5回日本高齢者虐待防止学会千葉大会のご報告(小川孔美)


平成20年7月5日(土)、第5回日本高齢者虐待防止学会千葉大会(大会会長多々良紀夫:淑徳大学総合福祉学部教授)が(財)海外職業訓練協会(OVTA)会場にて行われた。

本高齢者虐待防止センター会員からは、

1.副田あけみ「高齢者虐待防止ネットワーク構築支援の形成的評価研究」

2.梶川義人「高齢者虐待防止研修参加者の自己効力感の向上に関する研究Ⅰ」

3.山田祐子「都道府県職員に対する高齢者の権利擁護および虐待対応能力向上に関する調査研究」

4.浅井正行「電話相談から見えた高齢者虐待の現状Ⅳ-2007年度の相談件数とその分析」

5.小川孔美「24時間虐待防止電話相談事業における形成的評価研究―プログラムのためのニーズアセスメント再評価からー」(名前は各発表代表者)

の5つの演題が発表された。


本大会は、2006年4月から施行された「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が3年目となり、法改正に向けて、現在考えられる本法の課題を明確にしながら、多角的な検討を主軸に進められた。

「高齢者虐待」の問題は、目の前の「虐待」の事実を明らかにし、「虐待」がこれ以上起きないようにという取組みが当然のことながら大切であるが、それ以上にこの問題は、「構造的な問題」であり、行政対応においても、専門職としても、個人の意識としてもあらゆる角度からの捉え直しが必要であることを再認識した場となった。

施設や複雑な家庭環境のなかで行われる「不適切なケア」とは何かについての共通理解が進んでいない現実、発見されにくい性質をもつ高齢者虐待の「早期発見」を促進していく上においての「通報義務」「通報システム」上の課題、虐待予防システムの必要性など、人権を守るという視点に今一度立ち返り丁寧に議論することの重要性が示唆された。

2008年2月15日金曜日

英国のAEAを表敬訪問

当センター事務局の大嶋次長(右下)が、昨年(2007年)12月18日、英国のAction on Elder Abuse(AEA)表敬訪問してきました。AEAは、英国で高齢者虐待防止活動に取り組む著名な民間団体です。http://www.elderabuse.org.uk/

Gary Fitz Genalrd氏
代表、Gary Martin氏副代表に擁し、女性が過半数占める約28名により運営されています。

おもにGary Martin氏からお話
うかがいました。

AEAは児童虐待の防止活動
源流に、6年前に約2,000£の予算で設立されてから、現在約800,000£の規模にまで発展しており、本年3月か4月に、World Conventionの開催計画もあるそうです。しかし、英国では今のところ法制化の動きはないそうです。

わが国の「高齢者虐待防止・養護者支援法(Elder abuse prevention and Support & their care-givers Act)」
お送りするお約束し、約1時間半の会談終えました。

当センターは、国内外の団体とのネットワークづくり
事業の一つに掲げています。その下地作りとして、今後とも他団体との交流積極的に深めてまいります

2007年度杉並区委託事業 高齢者虐待防止従事者等研修講座の報告

2007年7月から、杉並区の委託を受け、区民対象、現任者対象の高齢者虐待防止の初歩的知識から、現任者向けの専門性の高い講座を開催しました。

以下講座カリキュラムです。



区民対象 啓発講演 きまじめ介護の落とし穴〜高齢者虐待とは何か〜 

1ブロック 7/30  2ブロック」 8/14  3ブロック 8/22



現任者対象 基本研修

第1回 高齢者虐待の防止と支援:概論

第2回 高齢者虐待防止と支援:法律

第3回 高齢者虐待防止と支援:認知症ケアと虐待防止

第4回 高齢者虐待防止と支援:心理



現任者対象 応用研修講座第1回(3ブロック)

見極め(発見、通報、調査、緊急性、重篤さの判断、記録)

応用研修講座第2回(3ブロック)

見立て(事前評価:発生の仕組み、発生のエコロジー)

応用研修講座第3回(3ブロック)

見通し(支援計画の立案:カンファランス)

応用研修講座第4回(4ブロック)

支援の技能(支援計画の実施:個人技+チームアプローチ)



家族介護者対象 男性による介護の現実

2008年2月10日日曜日

高齢者虐待専門・電話相談員・心のケア相談員養成専門講座修了のご報告

2007年9月16日から行われました専門講座は、本日、2008年2月10日に無事全講座を修了しました。

長丁場でしたが、日本各地から集まった受講生の方達は、文字通り雨にも負けず、風にも雪にも負けず通い続け熱心に受講されていました。

本日最終日、今後のさらなる交流と研鑽を約束してお別れしました。みなさまお疲れ様でした。

受講
のかたで集合写真をご希望の方はメールでお知らせください。データを送らせていただきます。