日本高齢者虐待防止センター電話相談

2010年8月2日月曜日

日本高齢者虐待防止センターニューズレター No.12





暑中お見舞い申し上げます
尋常ではない暑さですね。みなさま、体調のほうはいかがですか?
熱中症でお亡くなりになるお年寄りが増えています。残念です。

私も遠くで一人暮らしを続けている叔母や母に、水分をこまめにとるよう、しょっちゅう電話をかけて言っています。うるさがられていますけれど。

111歳の方の事件、今後も起きそうな事件です。それにしても区の対応には首をかしげざるを得ません。関連記事を<その他>に載せています。

まだしばらく猛暑が続きそうです。どうぞ、ご自愛ください。
本ニューズレターは一部映らない部分があります。また、横長で読みにくい可能性もありますので、同じものを添付ファイルでお送りします。

                                                                      (AS)
No12のコンテンツは以下のとおりです。

<エッセイ> 1本
<New Information>2本
<家庭内虐待> 記事7本
<施設虐待> 記事5本 
<その他> 記事8本
<お知らせ> 1

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目次

<エッセイ> 

1 「タイムシートの意外な活用法」 楠本 聡(団体職員)
<New Information>

1 「レビー小体型認知症について」   佐藤美和子(日本高齢者虐待防止センター)
2 「アルツハイマー病治療のあらたな可能性」金子善彦 (日本高齢者虐待防止センター)より提供
<家庭内虐待>
1 東金の母絞殺に猶予刑   地裁判決  千葉日報 2010年05月28日20時46分
2 介護に嫌気?83歳母親殴り意識不明 (2010年6月2日10時55分  読 売新聞)
3 睡眠薬…寝たきり妻絞殺の夫に猶予判決 介護20年など考慮  産経ニュース2010.6.14
4 無理心中で母親死なす、「介護疲れ」62歳息子 (2010年6月13日13時45分  読 売新聞)
5 「老老介護」殺人、妻に執行猶予つき判決 裁判員裁判Asahi.com  2010年6月25日
6 母絞殺 息子に懲役9年 裁判員会見 「裁く重み痛感」(2010年7月3日  読売新聞)
7 傷害致死に懲役5年 裁判員裁判 (2010年7月2日  読売新聞)
<施設虐待>
1 千葉・特養老人ホーム虐待:改善命令で千葉市長「遺憾」 /千葉 
 毎日新聞 2010年5月28日 地方版
2 施設入所の女性に暴行 傷害容疑で23歳介護福祉士逮捕 asahi.com2010年5月25
3 若き介護士の悪意なき軽率行為、虐待でないが…(2010年5月25日05時34分  読 売新聞)
4 NPO法人全国抑制廃止研究会は、厚生労働省の委託を受けて実施した「介護保険関連施設の身体拘束廃止に向けた基礎的調査」をまとめ、報告書を発表Care Management  online
5動画投稿問題:老人施設を一部業務停止処分 三重県松阪市 毎日新聞 2010年7月1日 
<その他>
1 障害者向け小規模多機能の生活介護を全国展開へ  医療介護CBニュース キャリアブレイン 20100609
2 高齢も障害も横断的にケアラー連盟が発足 ”介護者支援”の法制化目指して Silver-News.com. (2010/06/10)
3「介護で退職」26% 要介護家族アンケートで 2010/06/22 17:22   【共同通信】
4 ○厚生労働省老健局振興課 地域包括支援センター全国担当者会議
5 111歳ミイラ化“名ばかり高齢者”他にもいる? (1/2ページ) 産経ニュース
6 「母の年金もらえなくなる」 庭に死体を埋めた50歳無職男を逮捕 産経ニュース
7 自宅のゴミの山に…母の遺体1年間放置 41歳「年金ほしさ」 産経ニュース
2010.3.2 11:55
8 93歳母の遺体を半年放置 66歳の息子を逮捕 長野・諏訪 産経ニュース
2010.2.5 08:22
<お知らせ>

 養護者との関係づくりに焦点をあてた「安心づくり安全探しアプローチ(AAA)による高齢者虐待防止研修」開催のご案内
本アプローチは、解決志向アプローチと安全サインアプローチをもとにしたものです。
関係づくりにおける基本的な考え方と面接技法を中心としたワークショップを、9月18日、19日、東京秋葉原ダイビルにて行います。
詳細は、本ニューズレターの一番最後に掲載してありますのでごらんください。

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<エッセイ1>

「タイムシートの意外な活用法」

楠本 聡(団体職員)

去る6月13日、INPEAの「世界で高齢者虐待防止について考える日」のイベントの、ワークショップ「虐待対応の糸口をつかむタイムシート」に参加させていただいた。

高齢者・介護者の生活状況とニーズの把握に始まり、高齢者・介護者との関係づくりや介護者・支援者自身の気づきをもたらすことのできるタイムシートについて、学ばせていただいた。
ワークショップ後半では、隣の席の参加者と2人ひと組になりロールプレイを行った。テーマは「忙しい私の一日」。支援者役が、相手がどのような一日を過ごしているかを聞き取り、要約とフィードバックを行い、ねぎらいや相手の「強み」への気付きを促すといった内容だ。

私の隣に座った参加者は、妻だった。ワークショップの時間ぎりぎりに会場に来た私たちは、空いている席に横並びに座っていたのだ。離れて座るべきだった、と気付いたのはワークショップが始まったあと。ほぼ満員の会場ではもう席の移動もできない。
初めは私が支援者役。妻の生活を起床から順に聞いていく。もともと介護職だった妻は、結婚を機に仕事を辞め、今は専業主婦である。普段家で日中何をしているのか、そういえば改めて聞く機会もなかった。

妻は、私より30分早く起床し、弁当を作り、私を見送ったあとはごみ出し、洗濯をしてから朝食を摂る。あまりしていないのでは、と勝手に思っていた掃除も、毎日ではないがしてくれていた。夕食のための買い物も、なるべくいろいろなかたちで野菜を摂れるようにと工夫して、食材を選んでくれていた。

世間の感覚では当たり前のことなのかもしれないが、2人で仕事をしていた頃には考えられないような妻の専業主婦ぶりに、頭が下がった。
こんな機会でもなければ、しっかりと聞くこともなかっただろう妻の一日。ロールプレイのまとめのプロセスでは、思わず自然にお礼が出てしまった。

本来は虐待対応のためのタイムシートが、私たちの場合はお互いの生活を知り、感謝の念を新たにする助けになった。余計なことかもしれないが、2人の会話がなくなりつつある夫婦には、とても有効なツールなのではないだろうか。

夫婦関係でも介護者と支援者の関係でも、普段無意識に分かったつもりでいる自分自身や相手のことを改めて理解するためには、何かの仕掛けやツールが必要なのかもしれない。本来の目的から若干それてしまったタイムシートのロールプレイだったが、他にも応用できる分野があるのかもしれない…と思うのは私だけでしょうか?

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 <New Information1>

レビー小体型認知症について

佐藤美和子(日本高齢者虐待防止センター)

最近、認知症の原因疾患についてメディアで紹介されることが多くなりました。その中でも、以前にはあまり知られていなかった病気であるレビー小体型認知症について解説させていただきます。

認知症は、認知機能低下を主症状とする症状群の総称で、その原因となる疾患は70種類に及ぶと言われています。わが国で一番多いのはアルツハイマー型認知症(50%前後)、次いで脳血管性認知症(20~30%)、レビー小体型認知症(10%前後)、その他と考えられています。欧米では、アルツハイマー型認知症に次いで多いそうです。レビー小体型認知症が浮上してきたのは、疾患自体が増加したのではなく、いままで確定診断が難しかったからだと思われます。

レビー小体型認知症の脳には、レビー小体という特殊な物質が中枢神経系に見られます。この物質が大脳皮質に出現すると認知症になり、脳幹中心に現れるとパーキンソン病になります。よってレビー小体型認知症にはパーキンソン症状が付随しやすく、パーキンソン病はレビー小体型認知症になりやすいということになります。何故、この物質が脳内に現れるのかについてはまだ不明です。先日のTV番組では、脳だけではなく心臓などの身体の他の部分にも痕跡があり、検査で発見できるとの報告もありました(この検査は結構費用がかかるそうですが…)。

レビー小体型認知症も、認知症ですから必ず認知機能の低下が現れ、徐々に進行していきます。しかし初期には物忘れなどの認知機能の低下が目立たず、他の症状が先行します。前述したパーキンソン症状以外に、幻視、認知の変動、睡眠時の異常行動などがあります。幻視とは実際に見えないものが本人にはありありと見えている状態で、その対象の多くは小動物(ねずみ、虫など)や人です。幻視をきっかけに作話や妄想が起きることもあります。また、日や時間帯によって頭がはっきりしているときと、ボーっとしているときが入れ替わったり、夜中に突然起き上がって騒ぐ、怖い夢を見るといった症状も見られます。

原因がわかっていないため、完治に至る治療法はまだ発見されていません。症状を緩和させる治療法として、アルツハイマー型認知症の治療薬である塩酸ドネペジル(アリセプト)は、認知機能の低下や幻覚・妄想に対して効果があるといわれていますが、まだ医療保険適用されていません。また、幻覚やそれに伴う不安や妄想症状に対し、ある種の抗精神病薬を使用すると、過剰に反応して悪化する危険があります。最近は、抑肝散という漢方薬が、副作用が少なく効果のある薬として注目されています。

介護認定審査の際、認定調査票の記述などから明らかに幻視、パーキンソン症状などがあるのに、認知症の原因疾患の確定診断が行われていないケースがあり、そのため専門医の受診を促すことがあります。認知症の原因疾患についての知識の有無とそれに則した対応により、認知症者の予後も変わるのではないかと思われます。

<お知らせ>

 解決志向アプローチをもとにした「安心づくり安全探しアプローチ(AAA)による高齢者虐待防止研修」開催のご案内

 「安心づくり安全探しアプローチ(AAA)」による高齢者虐待防止研修

「安心づくり安全探しアプローチ(AAA):スリーエー)」による高齢者虐待防止研修は、高齢者虐待事例への関わり方・関係づくりの方法に焦点を当てた防止研修です。
本研修を受けていただきたいのは、居宅介護支援事業所ケアマネジャー・地域包括支援センター職員・行政職員等の実践家のみなさんです(大学教員、大学院生の方の応募は、定員に空きがある場合に限らせていただきます)。

2010年度 第1回研修
  
日時:2010年9月18日(土)、9月19日(日) 

場所:東京秋葉原  秋葉原ダイビル1202 首都大学東京秋葉原サテライトキャンパス
   アクセス:JR「秋葉原駅」徒歩1分、つくばエキスプレス「秋葉原駅」徒歩2分、
      東京メトロ日比谷線「秋葉原駅」徒歩約5分、東京メトロ銀座線「末広町駅」
      徒歩5分

研修内容:

<1日目> 

午前  10:00~12:30 

スリーA(安心づくり安全探しアプローチ)の基本的考え方:(講義)
解決志向アプローチの理解(講義とワーク)

午後  13:30~17:00
     スリーAによる高齢者虐待の相談通報時面接(講義とワーク)
      相談関係を築きにくい利用者についての理解(ワークと解説)


<2日目>

午前  9:30~12:30  
      支援の糸口をみつけるタイムシートの活用法(講義とワーク)
      プランニングにむけた安心づくりの方法(ワーク)

午後  1:30~4:30 
      機関用・話合い用プランニング・シートの作成および活用法(ワーク)
      解決志向的援助者になる秘訣
 
本研修では、「安心づくり安全探しアプローチ」をより実践的に使いやすいものにしていくため、また、その有用性を評価するために、アンケートへのご協力をお願いする予定です。アンケートは研修当日と、後日郵送によるものを考えております。なお、研修当日は、500円の資料代をいただきます。
お申し込みは、AAAのホームページからお願いします。

AAAのホームページ:
AAAのブログ:
安心づくり安全探しアプローチ(AAA)研究会  代表 副田あけみ(首都大学東京)
                          土屋典子(立正大学)
                          長沼葉月(首都大学東京)