JCPEA(日本高齢者虐待防止センター)ニューズレター 2011年12月号
今年を振り返って
日本高齢者虐待防止センタースタッフ 山浦成子
今年は、東日本大震災、それに伴う福島原発事故と歴史的な1年になりました。
家族や地域の「絆」が見直された年でもありました。
その一方、センターの電話には、家族の軋轢により苦しむ人たちの相談が寄せられていて、家族・身内というものの難しさを感じさせられます。
12月6日には、厚生労働省より平成10年度の虐待件数が16,764件だったと発表されました。家族や親族による虐待が16,668件で6.7%増えたと言っています。
これは、虐待されていることが明確で、市区町村が関わったものだけであって、氷山の一角であろうと思われます。
当センターに寄せられる相談は、解決がとても難しいものが多くなっています。
1例としては、経済が停滞し、高齢者の息子世代が働く場所を探すのも難しい昨今になり、必ず入ってくるお金と言えば両親の年金。それを目当てに実家に戻りお金をせびるケースが増えています。
お金を出さないと殴るけるなどの暴力が始まり、両親は困り果てるのですが、肉親の情もあり、警察に訴えることまではできずにいるのが現状です。
両親が自立ですとより問題は深刻です。自分の意思があり逃げ出せるのに逃げ出さない、外部からの介入がしにくいからです。
福祉関係者を入れることもできず、親族が口を出すと余計に問題がこじれ、困り果てた相談が寄せられます。
今迄の親子関係が影響していることも多く、親もそれがわかっているからこそ強く出られないということが続くのです。
世間体や見栄などで外部に相談せずに、親子カプセルのように内輪にこもっていては、解決のめどは立ちません。
隣近所にオープンにする、暴力から逃げだす、地域包括支援センターに相談する、場合によっては警察の介入を依頼する、など助言しますが、実行するには一大決心が必要です。
実際に、センターの助言を聞いて、別居の家族が動き、金をせびり暴力をふるう息子から逃れるために両親を連れだし、他の地域で暮らしを落ち着かせた例があります。
決心するまでには、どれほどの葛藤があったかしれません。毎日のようにかかってくる電話では、息子への愛情と暴力への恐怖で混乱し苦しむ姿が見えました。
相談員は、混乱を受け止め当事者たちが決心するまで辛抱強く付き合いました。自分で自分の生き方を決めるための時間が必要だからです。
電話相談は、電話することによって即解決することはありませんが、自分の気持ちを整理し次の一歩を踏み出すためのツールとして利用していただきたいと思います。
今年も暮れようとしています。私たちは今日も悩める方々に少しでも寄り添えるように、電話の前でお待ちしています。
1年間、ありがとうございました。